月と太陽
今夜の夕食は、とんかつに豚汁、大盛キャベツだ。

お母さんが「明日、学校祭を頑張れるように」と言っていた。

「勝つ」と「とんかつ」を掛けるのはわかるが、頑張れるようにというのは少し違うように思えた。

けれど、そんな風に考えてご飯を作ってくれているのは、とてもありがたい。

それにお肉だからスタミナがつくし、大勢の人が集まる場所にいることが苦手なわたしも頑張れそうだ。

夕食後、わたしはお風呂に入り、自分の部屋に戻った。

最初は他人の部屋を借りているという感覚が抜けずにいたけれど、最近少しずつ自分の部屋だと感じるようになってきた。

ベッドに腰を掛け、タオルで髪の毛を拭く。

一つ溜め息をついて、ベッドに横になった。

すると、壁をノックする音が2回鳴った。

わたしは起き上がって、音がした方の壁を見る。

音を鳴らしたのは、タケルだ。

コンコンと2回鳴るのは、「起きてるか?」ということを意味している。

わたしはタケルの部屋がある方の壁をゆっくりと2回ノックし返した。

「起きてるよ」というサインだ。
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