月と太陽
ドアを半分ほど開くと、ドアに手を掛けたまま彼を見上げた。

「な、何?何か用?」

タケルが来ることを待ち切れず、ドアの隙間から覗いていたなんて、彼にバレるのが恥ずかしくて、ツンケンした態度をとる。

わたしはこういうところが可愛くないのだと、自分でそう思った。

「大した用じゃないよ」

そう言うと、タケルはスウェットのポケットから、何かを取り出した。

そして、わたしの方へ一歩近付く。

近付かれた分、一歩引きそうになったが、拒否していると思われたくなくて、引こうとした足をグッと抑えた。

タケルはわたしの目の前に長いチェーン状の物を摘んで見せた。

それが何なのか、一瞬わからなかったが、すぐに気付いた。

ネックレスだ。

先端には、三日月がキラリと光っていた。
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