月と太陽
「これ、母さんがしずくにって。渡して欲しいって頼まれたんだ」

わたしは手のひらを広げた。

タケルはゆっくりとわたしの手のひらにネックレスを下ろす。

白っぽい石で形取られた三日月の尖った二箇所には、キラキラ輝くダイヤのような宝石がついていた。

「わたしなんかが…貰っていいの?」

「母さんが若い頃、父さんから貰った物らしい。今、このネックレスが一番似合うのは、しずくだからってさ」

そう言うと、タケルはわたしの手からネックレスを拾い上げ、わたしの首に回した。

心臓の鼓動が全身に伝わるように速くなっていくのを感じた。

あまりにもタケルの顔が、身体が近過ぎて、どこを見ていればいいかわからず、わたしは目をキョロキョロさせ、あちらこちらに視線を移した。
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