月と太陽
「明日の学校祭、楽しもうな。人も沢山だし、受付で知らない人とも会話をしなくちゃいけないから、しずくには一つの試練になるかもしれないけど、それがあれば大丈夫だ」

タケルはそう言って、わたしに親指を立てて見せた。

ただのネックレス。

そう言われてしまえば、それまでだろうけど、わたしは信じたい。

この三日月にわたしを支えてくれる力があると。

タケルは「俺の用事は終わった」と言い残すと、手をヒラヒラとさせて自分の部屋へと戻って行った。

わたしは部屋に入り、ドアを閉める。

そして、ベッドのすぐ横に置いてある等身大の鏡の前に立った。

自分の姿を見るのは好きではないが、ネックレスを身に付ける自分を見たいと思ったのだ。

わたしの胸元で三日月は光っていた。

片時も外したくない、そう思った。
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