月と太陽
すると、壁が鳴った。

コンコンコンコン

4回鳴るのは「おやすみ」のサインだ。

わたしはベッドの上にあがり、壁に近付いた。

そして、返事をした。

コンコンコンコン

これで壁を通しての会話は終了だ。

わたしはベッドに身を投げた。

あ、また「ありがとう」と言うのを忘れていた。

天井を見上げると共にそう思い出す。

「おやすみ」と返事してしまったし、これから言いに行くのも気が引ける。

明日、言おう。

そう思っていると、思いもかけないことが起きた。

コンコンコンコン、コン

壁が鳴ったのだ。

しかも、5回。

今までに5回鳴ったことなどない。

意味がさっぱりわからず、5回の意味を聞きに行きたいと思ったが、やはり「おやすみ」のあとなので行くのをやめておくことにした。

明日、「ありがとう」のついでに訊こう。

そう思って、目を閉じた。
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