イジワル王子と屋根の下
「…はぁ、」
あー…怠い。
風邪は、嫌いだ。…そもそも好きな人なんていないとも思うが、俺は特に嫌いだ。
体は熱いくせに寒気するし、力は入らないし。いつもは平気な一人の部屋も、何か妙に虚しくなる。
静かな音、気配のない空気。全て、が。
(…これぐらい仕事行けるってのに、)
ガキじゃあるまいし、何必死になってるんだか…そう呆れながらも、そっと目を閉じる。
つーか俺も、熱なんてどれくらいぶりだよ…。
最近バタバタし続けてて、少し落ち着いたと思ったらこれだ。どっと疲れが出た故の熱だろう。
…本当、色々ありすぎた。
『…瞬、』
目を閉じれば、思い出す。
もう嫌いなはずの、あの声と
『瞬!』
耳触りな、うるさい声。
それらが交互に耳の奥に響く。