イジワル王子と屋根の下



「けどやっぱりこうやって熱出した時とか可愛いんだよねー」



興味なさそうに聞き流す俺に、梨沙は笑いながら問う。



「瞬は兄弟は?」

「兄貴が一人。けどもう結婚して家にいないし、滅多に会わねぇ」

「弟なんだ…意外」

「ガキの頃からほっつき歩いてばっかであんま家にいない奴だったから、大した思い出もないけどな」

「……」





チビの頃から家には一人でいた。

そんな俺の家は、梨沙の家とは正反対だ。





「うちは親も共働きだったから、家にもほとんど一人で…別に俺はそれが普通だったから、特別寂しいとか思ったことない」



そう。そもそもの『普通』が違くて、そういうのが好きなタイプでも、憧れたりするタイプでもない。

けど、





「…けどお前の話聞いてると、どこかうらやましい気持ちにもなるのは、何でだろうな」

「……」





家族とか、手料理とか、家の中に誰かの感触があること。

それらがこんなにも、心地がいいなんて




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