イジワル王子と屋根の下
言われてみれば、今日は朝からミスばかりだ。
仕事の制服であるエプロンは忘れるし、ドアに頭はぶつけるし、ケーキを落とすのもこれで三個目…。
仕事中なんだから、しっかりしなきゃ。
そう思うものの、頭にチラつくのは昨日の彼のそっけない態度とシャツについた赤い口紅。
(…彼女、いるんだ)
聞く前に、答えが出てしまった。
彼にとっての私の存在
“ただの、同居人”
それ以上も以下もなく、ただ同じ家にいてうるさく言うから一緒に食事してるだけ。
時々の優しさはただの性格。
考える度、またズキッと胸が痛む。