イジワル王子と屋根の下
「はい、お弁当」
「あぁ。じゃあ行ってくる」
「あっ、待って!」
素っ気なく行こうとする瞬に、私はスーツの上着の裾を小さく引っ張る。
「?」
「…い、いってきますのチュー、とか…」
「…はぁ?」
勇気を出して言う私に、その顔は怪訝に歪む。
「いきなり何言ってんだよ、お前は」
「だっだって、たまには恋人らしいことしたいじゃん!」
「…お前絶対記念日だのクリスマスだのバレンタインだのうるせー女だろ」
「何よ!悪い!?」
それは案の定嫌そうな反応で、呆れたように眉間に深いシワを寄せる。