イジワル王子と屋根の下
愛情表現をするタイプの人じゃないってことはわかってる。
けど、それでも時々不安になるよ。
本当にあの日のことは私の夢だったんじゃないかって、自信が持てなくなる。
ーガチャ…
「!」
そうしていると玄関から聞こえたドアの音に、私はキッチンから廊下へ顔を覗かせる。
「おかえりー…」
「……」
見ればその顔はいつも以上に疲労感に満ちていて、フラフラとした足取りで靴を脱ぐ。
「ず、随分疲れてるね…」
「後輩のミスで朝から晩まで取引先に謝りまくったからな…疲れた…」
その様子から見て心底疲れているようで、足はそのまま部屋へと向かう。