そよ風の妖精
二人がまだじゃれあってる中、
あたしは深い眠りにつく。
曖昧な記憶の中で、あたしが
唯一覚えてるのは、渉と悠ちゃんが
何やら言い合ってること。
「俺……なんだ」
そう言った渉に、
「お前に……から」
と言い返す悠ちゃん。
よく聞き取れなかったから
所々わからない部分はあるけど。
そのあとあたしは爆睡しちゃったみたいで
記憶は一切ない。
でもあたし、倒れる前に咄嗟に
悠ちゃんの名前を呼んだ。
本当は少し気付いてる。
でも…まだ気付かないふりしてるのは
翔ちゃんがまだ忘れられないから。
それは恋愛感情なのかはよくわかんないけど、
まだ心の中にいるのは確かで、
翔ちゃんが生きていてくれたら…
なんて思うことだってたくさんある。
そんな中途半端な気持ちで打ち明けたくないから、
あたしはまだ気付かないふりをする。