そよ風の妖精
何度呼んでもやはり返事はなく、
翔ちゃんが目を覚ますことは
2度となかった。
泣いて泣いて泣いて。
きっともう涙が枯れてしまうんじゃないか
と思うほど泣いて。
でも涙は枯れることなく溢れ出す。
初恋は実らないって本当なんだね。
翔ちゃんが亡くなってから1か月経つのに、
あたしはなかなか現実と向き合えなかった
きっとまた翔ちゃんの部屋に行ったら
マンガを読みながら「時雨ちゃん!!」
って話掛けてくれる気がして、
何度も何度も翔ちゃんの部屋の扉を
開けたり閉めたりした。
でもやっぱり翔ちゃんがいることはなくて
翔ちゃんの部屋で何度も泣いた。
そのたびに、悠ちゃんがきてただ横に
座って泣きやむまでずっと横に
いてくれたね。
仲の良かった子も励ましてくれたけど、
でもやっぱり翔ちゃんの死は
あたしの心に深くのしかかった。
でもね、悠ちゃん。
恥ずかしいから今は言わないけど、
きっといつか大人になって
恥ずかしさがなくなったら
あたしはあなたに伝えたい。
「あの時はありがとう」って。