きみだけが好き。



「うわっ!? なんで森田さんが泣くのよ!?」


「だってっ その気持ち、わかるっからっ……好きな人に、告白するのでさえできない私なのにっ、やまおかさんはっすごいよぉっ」


 なんだかボロボロと涙がでてくる。


 好きな人にフラれちゃうなんて……想像するだけで泣いちゃう。


「あははっ そっか…八代くんの気持ちわかるわこりゃ。 じゃ、あたしは帰る。 てか、森田さんは気持ち伝えないわけ?」



「…へっ」


 カバンを不良っぽく肩に掛け、山岡さんが言った。


「八代くんに」


╼╼╼ボンッ!


 『八代くん』その名前が出てきただけで、恥ずかしくなる。


「うわぁ~照れてんだ? ま、時間の問題か…。 それと、感謝してほしいのが」


「…?」


 教室を出る一歩手前で、山岡さんが言った。


「席替え、却下しといたよ。 あと、もう八代くんとは関わらないし。 じゃーね」


 席替え却下……してくれたんだ。


 今まで、思わなかったけど……


 山岡さんて、いい人だね。




「山岡さぁーん!! ありがとーーーっ」


 私は、廊下いっぱいに響くぐらい、大きい声で叫んだ。


 その声に振り返った山岡さんは、笑ってくれた。 
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