きみだけが好き。


「じゃー最初からやってみてさ、わかんなかったら聞いて」


「うん」



╼╼╼カリカリ


╼╼╼カリカ…


「あの、八代くん、ここがわかんないや…」


「ん? どこ」

 
 !?


 八代くんが、私が指差した方を見ようとして、近くなる。


 わーーっ、近いよっ。


 ……八代くんの匂いっていい。


 香水かな?  風が吹いてくるからよく鼻をかすめる。


「あーここは、因数分解して、計算しやすくさせると出来る」


「…う、うん! わかったー」


 聞いてなかったけど、そんなこと言えない……。


「…森田、ボーっとしてただろ? もっかい言うから」

 
 わわわっ。


 バレてた……。 見っともないな……。


 ちゃんと聞いてなくちゃ。


 

╼╼╼╼それから勉強会は着々と進んで行った。




****************



「もう外暗いし、勉強会お開きにしよーー」


「そうだな。 森田、わかった?」


「うん! 八代くん、先生よりもわかりやすい!! ありがとーっ」    


 八代くんは、時々ボーっとしてた私に、何度も丁寧に教えてくれた。

 
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