きみだけが好き。
生徒玄関に着いて、靴を履きかえる。
さっき……私が八代くんを見て言ったとき、『…おう』とか言って、目を合わせてくれなかった。
『お願いします』なんて変な言い方しちゃったからかな…。
あ。もう本格的に暗い…。
外に出ると、夜の冷たい風があたる。
「森田さ、数学のテスト普通だったって言ってなかったっけ?」
「えっ、そ…そうだったけ?」
そう言えば、そんなこと言ったかも…!
今思えば、もう八代くん私の点数知ってるし…。
そう思うと私ヘンなこと言っちゃったっっ。
「ははっ。 まさかなーあれが普通とはなー」
「も、もう! だって、言えないじゃんっ あんなのっ」
なんで今そんなこと言うのー!?
思い出すと、恥ずかしいじゃん!!
「八代くんのイジワル…」
「別にイジワルじゃねーよ。 いじってるだけ」
「同じだよっ」
「ははっ」
やっぱり、優しくなんかないっ。
「もうやだ…っ」
「森田いじんの楽しー…」
嫌なのに、嫌なのに。
なんでキュンとくるんだろう…。