きみだけが好き。
「どうして…ですか?」
その女は、今にも涙がこぼれそうだった。
「えっと…好きなひと、がいるから」
…うそつけ。
そんなんいないくせに。
でも、決まってこう言えば、女は引き下がるんだ。
「そ…っか…。 うん、わかりましたっ
蒼介くん、がんばってね!!」
ほら…。
…その女は中庭を出て行った。
何度、『好きなひとがいる』ってウソついたんだろうか…。
恋なんて、どうでもいいし、したことないくせにな。