きみだけが好き。



「…なんか私、八代くんには勝てないかも…」


「なにが?」


「だって、最後は絶対八代くんの言うこときいちゃう…」


「ふっ、じゃあ…ちゃんと送らせて」


「……うん」


 八代くんといるのはイヤじゃない。


 イジワルなこと言うけど、本当は優しいことも分かってきた。


 なんでだか知らないけど、時間の流れがゆっくりで……でも、早く感じたりもする。


 なんだろ、変だなー。



「ここ?」


「あ、そう。ここだよ」


 いつのまにか家に着いてたみたい。


「今日はありがとう。いろいろと…」


「おー」


「………」


「………」


 この沈黙は……なんだろう…。


 別に気まずくもないし…。


 イヤじゃない。



「じゃ、俺行くわ」


 八代くんは今来た道に歩き出した。


「あ!」


 特にないのに引き留めちゃった…っ! 


「?」


「お、送ってくれてありがとーっ」


 八代くんは小さく笑って、『また明日な』って言ってくれた。







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