きみだけが好き。



 紫月は電話をかけ始めた。




「ねぇ、花帆ちゃん」


「うん?」


 石段に座って、紫月を待ってる間、未琴ちゃんから話しかけられた。


 どうしたんだろう。


 未琴ちゃん、緊張してる……??


「あたし、前に『1年生の時から花帆ちゃんと友達になりたいと思ってた』っていったじゃない?」


「うん。 あの時は嬉しかった」


 そういえば、紫月と未琴ちゃんが初めて話した日に、未琴ちゃん泣きながら『ありがとう』って言ってたこともあったね。


 そして、その時に私と友達になりたいと思ってた、って言ってくれた。


「花帆ちゃんは覚えてないかもしれない…。 でも、聞いてくれる? あたしがどうして花帆ちゃんと友達になりたいと思ったのか」


「…うん、聞くよ」


 それから未琴ちゃんは話し始めた。


「1年生の時、あたし誰とも話す勇気なかったの。 それでクラスで孤立しちゃって…。
それでよく中庭の花壇の所に行ってたのね。 そして、ある日…花帆ちゃんがいた」


「私…?」


 そんなことあったかな…?


 私は記憶を遡ってみる。  …あ!!


「私、確か花壇に水あげてたんだ」


「そう。 花帆ちゃんがニコニコしながらお花に水をあげてて…。『大きくなって早くキレイなお花を咲かせてね』って言ってたの。…あたし、昔から人の性格とかピンッとくるっていうか、あたるんだ。 その時思った。『この人は本当に優しい人なんだ』って」


「そんな…優しいなんて…」


 
< 67 / 288 >

この作品をシェア

pagetop