きみだけが好き。
人込みを抜けて歩く私たち。
途中、カップを落としてしまったことに気づいたけど、今はそのことよりも繋がれた手に意識が集中する。
そろそろ午後8時になるのか、花火が始まるというアナウンスが流れた。
八代くんは、何も言わずただただ歩いていく。
どこに行くんだろう…?
そう思ったのは一瞬で、草が生い茂っている芝生に着いた。
「八代くん…?」
人は私たちとほんの2,3人しかいなく、お祭りから少し離れてるこの場所。
「ここさ、花火が見やすい場所。 てか、俺と健と由紀の秘密の場所。 よくここで遊んでた。 そんで花火見たりした」
「そんな場所に、どうして私を…?」
秘密の場所を、私なんかに教えていいのかな?
「森田だから」
「え…?」
森田だからって、え? どういうこと?
「そろっと花火始まるな。 見ててみ」
それから数分。
╼╼╼╼ヒューーッ ドンッ
「うわぁああ!! すごいッ きれいっ」
「な? ここは格別」
「ほんとだね!! このお祭り、毎年行って花火見てるけど…こんなにきれいに見えたの初めてっっ!!」
花火は、すごくきれいで、今までみたどんな花火よりも輝いて見えた。
きっと好きな人と見てるからなのかも。
喜んでる私の隣りで芝生に寝転がる八代くん。
「森田も寝てみ?」
八代くんに勧められて、私も寝転んでみる。