private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 「そっそう」


 そのあと、痛いから力を弱めてって、言おうとした。

 星哉が突然振り返って、あいてる方の手で私の顎を持ち上げる。

 夜の明かりが照らす星哉の顔は鋭くて、瞳が冷たく光っていた。

 鼓動がすごく速い。

 怖かった。

 無意識に目が逸れる。




 刹那―――――




 自由にならない私の唇に柔らかいものが重なった。



 せっ星哉!!



 繋いでいた手がほどけ、私の頭の後ろを押すようにして支え、顎から離れた手は腰に回った。

 そして、唇は離れる。


 「他の奴は騙せても、俺には通用しない」


 鼓膜を撫でる星哉の優しい声。


 「どういう、意味?」

 「演技派のわりに、隙がありすぎってこと」


 急に廊下が明るくなった。


 「まずい。岡崎しゃがめ」


 甘い雰囲気は消え、一瞬にして冷ややかな緊張が走る。

 机の影に身を潜め、耳をそばだてながら、じっとして動かない。

 間もなく教室の入り口に、黒のスラックスを履いた足が見える。

 自分の手を組んで顔の前で合わせて祈るようなポーズをとった。

 心もとない。

 先生何してるの?

 何もないよ、早くいなくなって。



 ガラッ



 さっき星哉が開けたドアが閉まる音。




 グサッ、ガチャン


 え……


 カギ、かけたよね?

 閉じ込められた?
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