private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 死なないことは分かってる。


 しかし俺は、負けることも分かってる。





 「あなたには自覚がないのですか! 彩並グループの
 次期社長ともあろうお方が、情けないにもほどがあります」


 うるせぇよ………

 会社に都合があるように、俺にだって、都合とか……

 感情とか……

 いろいろあんだよ!

 それを全部押し殺して一生過ごせっつうのか?



 お前にできんのかよ。



 そこまでして俺が得るものは何だ?

 富か?

 権力?

 名声か?

 いらねぇ……




 そこまでしなきゃ手に入んねぇもんなんか、何一ついらねぇ。



 そんなもん、テメェにくれてやるよ!!








 苦しくて、もうダメかもと思って両目閉じたら、

 両方の目尻から熱い涙がこぼれおちた。

 スッと圧迫していたものが消えて、急に大量の空気が肺に入ってきた。


 「ゴホッゴホゴホゴホゴホッ……」


 苦しい……

 仰向けだった身体をなんとか横にして首の付け根の辺りを抑えたら、

 心臓が猛烈な勢いで鼓動してるのが分かった。





 苦しいからだ。

 だから、涙とか出てくんだ。




 くそ……


 止まんねぇ………



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