private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 「お呼び止めしてしまって、すみません。
 お送りさせていただいても、よろしいですか?」

 「いっいいえ! それは……」


 寿と同じ車に乗れってことでしょ?


 「わたくしの個人的なお誘いだとしても?」




 こっ個人的……?

 それはどういう……




 「寿には秘密です。いかがですか?」


 優しさがにじみ出てるような、朗らかな大人の微笑。

 誰にだってできるようなものじゃない。


 「じゃあその……お願いします」


 カッコイイっていうよりも、綺麗とか美人

 ていう方が合ってる鷹槻さんの面差し。


 何だかもうそれだけで気後れしちゃって、

 自分が子どもっぽく思えて、すごい恥ずかしくなった。


 「このあとのご予定は?」

 「ただ帰るだけです」

 「美味しいスイーツのあるお店を見つけたので、
 ご馳走させていただけないでしょうか?」

 「えっ?」


 それって、デートってこと?


 「わたくしこう見えて甘党なんですよ。
 ですが……なかなか一人で行くことはできなくて……」


 鷹槻さんは、私から目をそらして、ちょっとはにかむ。


 「もしよろしければ、つき合っていただきたいな、
 なんて思っていました。すみません、ご迷惑ですね」

 「そっそんなことないです! 是非ご一緒させてください!!」

 「本当ですか? ありがとうございます。では、車を手配致しますね」


 優雅な物腰で嬉しそうに微笑むと、ケータイで電話を掛けた。


 車が来るまでの間、私は緊張を笑顔で隠しながら鷹槻さんと広場で待つ。

 下校中の生徒とか、道行く人がみんなこっちを見てから過ぎ去っていく感じ。




 私、絶対釣り合ってないよ……

 彼女とかじゃ、全然ないのに。




 「鷹槻さんて、いつから執事をやってるんですか?」

 「そうですね……生まれたとき、からでしょうか」

 「すごいっ。プロじゃないですか!!」


 鷹槻さんていくつなの?

 見た目ではまだ三十前っていう感じだけど。
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