private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 私っ?

 ちょっとまた何で!?


 「待たせて悪かったな。行くぞ」

 「ちょっとコトブ」


 寿は私の机の前に来て左目ウインクパチッ。

 私の心臓ドキッ。


 「何で岡崎さんなの?」

 「お前ら彼女だろ? コイツは俺のダチ。美希、早く支度しろ」


 寿は強引で強引で、でも、「行かない」って言えなかった。


 「は~っ……」


 車に乗り込むなり寿は深いため息を吐く。


 「サンキューな」

 「うん」


 私としても、良かったかも。

 この車に乗ってれば、星哉たちと会わなくてすむ。


 「どうした?」

 「どっどうしたって?」

 「らしくねぇから」

 「そっそう?」


 寿の中で、私はどんな人物として映ってるんだろう。


 「具合悪いのか?」

 「べっ別に……」

 「じゃ何だよ! イライラする」

 「イライラするってアンタねぇ!
 嫌がる私を車に乗せたのあんたでしょ?」


 クッションでもあったら、寿に向かって投げつけてるところだ。


 「だいたい誰のせいでこうなったと思ってるの? 全部アンタのせいじゃん!!」

 「こうなったって、どうなったんだよ」

 「星哉と別れることになって、奈々は星哉とデート中!」


 寿はそこでやっと全てを理解したみたいだった。

 まったく、本当にお気楽。

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