private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 意図的だろ?

 これは絶対。


 「美希が彼氏と破局した。その彼氏は今、新山といい仲らしい。俺のせいだ」


 そのうち見抜かれると思って、俺は話すことにした。


 「岡崎様は何とおっしゃっているのですか?」

 「俺にできることは何もないって」

 「でしたら、誠意を見せるしかございませんね」

 「どうすりゃいいんだよ」

 「謝罪はされましたか?」

 「当然だろ」

 「ではもう一度自分の行動を振り返り、二度と同じ過ちを
 繰り返さないとご自分に誓ってください。まずはそこからです」


 俺は一つ、ため息を吐いた。

 鷹槻の言葉は含みが多すぎて、激しく耳に痛い。

 ピンポイントで突かないのは、他のことに関しても言ってるのかもしれない、
 
 とか思うのは、やましいことがあるからか?



………………二股?



 あれは二人が納得してるぞ?

 別に俺が仕掛けたわけじゃない。


 「心貢……」


 心細そうな琴音の声がして、俺は顔を上げる。

 泣き腫らした顔の琴音が鷹槻を見つめていた。


 「はい」

 「明日、休み取れる?」

 「わたくしには何とも……」


 鷹槻は俺に視線を注ぐ。


 「一日だけ貸して? そしたら明後日、出てくわ」

 スッキリしたような表情をして、琴音は真っ直ぐ俺を見た。


 「何でここに来た?」

 「二人に会うため」


 俺と琴音のマジな会話は、いつも飾りを持たない。


 「だったら出てかなくていいだろ」

 「迷惑なんでしょ?」


 潔よく、琴音は自分を切った。
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