private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 向こうがピキッと線引きしてるせいか、俺が梨乃の抱える問題と

 無関係なはずはないのに、女たちの行動が白濁して見えにくい。


 「俺のこと信用してねぇだろ」


 今までの自分の行動を振り返れば、信用しろっつうのが無理だとは自覚してる。

 しかし俺が梨乃の抱える問題を無視すれば、状況は悪化。

 取り返しのつかないことにもなりかねない。






 やるなら、今だ。






 「梨乃話せ。多分俺しかお前を助けらんねぇ」


 夢花をないがしろにして俺と登校したことが引き金になってるとしたら、

 この状況をうまく片づける術を持つのは、俺だけだ。


 「どうやって助けてくれるの?」


 瞳に不安を溶かし込み、弱々しい視線を送ってくる梨乃の頼りない表情。


 「話してくれなきゃどうとも言えない」


 優しい言葉を並べたてるのは俺の気性に合ってねぇ。


 「面倒なことになるよ?」

 「それは二股かけた俺の責任でもあるな」


 卑怯な手を使った梨乃にも責任がある。

 二度とそんなことをしないように、そこは自覚して貰わないと

 困るから、俺は敢えて冷たい視線を送り続けた。


 「みんな、わたしが寿くんの近くに行けないようにするんだ」


 梨乃は、とつとつと水面下で起きていた内争を語り始める。


 「お昼のとき、夢ちゃんは教室の外に出たがるでしょ?
 わたしは寿くんが出て行くまで、友だちに足止めされてたんだよ」


 そして俺たちが教室を出て行くと、みんな一斉に

 梨乃から離れようとするらしい。

 梨乃も食事の仲間に入れて貰おうとすると、

 変な理由をつけて断られるというのだ。

 最初のうちは足止めが、ただの会話だと思ってたが、

 次第に梨乃に対する周りの扱いが厳しくなり、現在に至る。

 この状況は完全に、嫌がらせを受けた上での登校拒否だ。


 「自業自得と思ってる?」


 話し終えて黙った梨乃に、確認の意味で訊いてみる。
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