private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 寿とは教室で別れ、私が一人で下校してたら本当に寿からのメールを受信した。

 教室出るとき二人分のカバン持ってたけど、マサカ、今彼女と一緒じゃないよね……


 【六時過ぎたらいると思う。フロントには鷹槻を出すように言えば
 繋いでくれるように言っといたぞ。感謝しろよ】

 【ありがとう】


 口ではちゃんと言えなかった言葉を文章にして、ちょっとだけドキドキしながら寿に送信する。

 “送信されました”


 もう、届いてるかな。

 ケータイをそのまま持って歩いてたけど、寿からの返信はこなかった。

 別に待ってたわけじゃないよ、だいたい


 【ありがとう】


 だけなんだし、返信する言葉なんかない。

 寿は“どういたしまして”なんて言うキャラじゃないしね。

 電話なんかするつもりなかったけど、六時が近くなると、だんだん落ち着かなくなってきた。

 鷹槻さんとは相談ごとなんか聞いて貰うほど、仲良くないよ。

 一度、デートしたくらいで……

 あのとき私落ち込んでたけど…………

 え?

 あれ……もしかして寿の差し金? 

 んなわけ、ないよね。

 ないない、ありえない。

 あのとき寿は唯夏さんのことがあって、自分のことで精一杯だよ。

 星哉にふられたのは寿の部屋でいろいろされた日だったから、

 鷹槻さん私を心配して様子を見に来てくれたんだと思う。

 だからあれは、鷹槻さんの意志。

 寿のこと、私が悪く思わないように、かな。

 城跡で鷹槻さんが言ってた言葉が頭の中に浮かんできた。

 いいね寿は、命かけてまで守ってくれるなんていう人がいて。

 おまけにモテモテだし。



 ―――――神様は不公平だ。



 そう思ったとき、ケータイが鳴りだした。

 全然知らない番号からで、しかもコールが長い。

 誰?


 「もしもし」

 「鷹槻心貢と申し」

 「たっ鷹槻さんっ?」


 ビックリして心臓吐き出しそうになった。
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