private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 「岡崎様からお電話があるかもしれないと告げたあとは、自室にこもっております」


 私……態度が悪かったかもしれない。


 『マジヘコむから、そういう態度とるのやめろよ』


 寿がため息のあとにこぼした台詞。

 あのとき、寿の申し出る何もかもを断ろうとしてたことが、

 本人にしっかり伝わってて


 『俺じゃ役不足なんだろ?』


 とか、


 『送ってやるっつっても、お前は歩いて帰るんだろうな』


 とか………

 せっかく心配してくれたのに、傷つけちゃったかな。

 そういえば、テスト期間が始まる前に、電話もかけてくれたっけ。

 邪険にいろいろ言っちゃったな……


 「わたくしが頼れるのはもう、岡崎様しかいらっしゃいません。
 どうか……非力なわたくしを、助けてくださいませんか?」

 「いっいいですよ! すぐ連絡します」


 私が連絡するかどうかで相当迷ってると思ったのかもしれない。

 鷹槻さんの声が弱々しくて、緊張して心拍数上がって早口になっちゃった。


 「ありがとうございます。岡崎様、このご恩は一生忘れません」


 鷹槻さんて、本当にできた人だと思う。

 忠誠心の塊で、武士みたいだ。


 「そんなに気にしないでください」

 「岡崎様は本当に心の広いお方ですね。多大なご迷惑をおかけしているのに」

 「そんなことないです」


 やけに恐縮する鷹槻さんの丁寧すぎる言葉が私を更に緊張させる。

 顔から火が出そうだ。


 「寿は学校でも奔放にしていることと思いますが、常に孤独とともに生きておりますから、
 やはり岡崎様のような方に支えていただかないと、心が折れてしまうようですね」

 「たっ鷹槻さん何言ってるんですか!」


 突拍子もないこと言わないで欲しいよ、これから連絡しなきゃならないのに。


 「すみません。常日頃、そのように思っていたものですから」


 電話向こうでクスクスと笑う鷹槻さんが簡単に想像できた。

 そんなこと言われたら、もっと恥ずかしくて意識しちゃうよ。
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