private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 実際寝るつもりはなかったが、ベッドでごろごろしてるうちに、

 マジで寝ちまった俺は翌朝、陽が昇る前に目が覚めた。

 そういや昨日風呂入ってねぇじゃん。

 風呂に入る支度をしてバスルームに向かったら、異様なことに気づいた。

 ジャ~~~~~~~~~

 風呂場から聞こえるってことは、シャワーの音だろ?

 朝の四時だぞ?

 こんな変な時間に誰がシャワーなんか浴びんだよ?

 このバスルームの他には天蓋つき露天風呂があるが、こんな時間に使いたくない。

 俺の部屋にもシャワーがあったりするが、風呂に入りてぇ。

 そういうわけで誰かが出てくるのを待つことにする。

 ちょっと腹減ったからダイニングに行ってみたら、

 テーブルの上に虫除け網が乗ってるのを見つけた。

 網をとると販売用の握り飯みたいに、セロファンでノリが包まれた飯の塊が現れる。

 几帳面にキッチリ三角で、しかも皿の近くにはセロファンの外し方を説明する書き置きがあった。

 最後は不都合があれば起こせとしめてある。

 普段はひょうひょうとしてて、吸血鬼みてぇな冷たさで俺をからかってるくせに、

 どんな顔してこれつくったんだよ。

 トントントンと軽い感じの足音が聞こえ、俺は虫除け網をまたかけて、ダイニングを離れた。


 「心貢~? タオルがないのぉ」


 シャワー使ってたの、琴音かよ。


 「タオルだったら棚」


 琴音を見た瞬間俺は絶句。


 「キャ~~~~~~~~ッ!!」


 足をよじり、手で胸元を隠して琴音はその場にしゃがむ。


 「どうした琴音っ!!」


 叫んだのは、俺じゃない。

 鷹槻がドアを蹴破らん勢いで出てきて、琴音の肩を抱く。

 何だ、これは。

 待て……落ち着け……


 「寿が、寿がぁ……」

 「寿様がどうかされましたか?」


 何で鷹槻は身体触ってんのに、俺は騒がれるんだ……?

 数々の疑問が浮かんでは消え浮かんでは消えしてる中、鷹槻は

 冷静に着ていた物を脱ぎ、琴音を風呂場へ連れて行った。
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