private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 美希がこの反応ってことは、俺相当ヤバイことしたのか?


 「何となくだけど……ごめんな?」


 愛想笑い浮かべたら、美希はちょっとはにかんだ。

 ギクッとして、心臓に釘が刺さった感じがする。


 「いいよ。気にしてないから」


 気にしてない?

 何をだ! 最後までいったのか?

 いや、それにしちゃぁ朝起きたとき、ベッドサイドにいたっつうのはおかしい。

 ベッドはキングサイズだし、まず落っこちねぇだろ。

 キスくらいしたのか?

 覚えてね~っ。

 改めて美希の顔を……唇を見る。

 赤くてぷっくりと膨らんでいて、だけど起きたばかりなせいで、乾いた唇。

 と、唐突にその肉厚な唇が動き出す。


 「私は寿のこと友だちだと思ってるから、何かあったら言ってね? 力になるよ」

 「そっそうか。ありがとな?」


 なかった、何も、なかった。

 俺はただ美希に抱きついただけだ、そうに違いない。


 「あんまよく覚えてねぇけど……多分俺、美希がいなかったら…………
 どうなってたか分かんねぇ」


 これはマジな話し。

 飲んでたのはアルコール度数が五十近いバーボンだ。

 記憶吹っ飛ぶまで飲むことは滅多にないし、吹っ飛んだときは、

 過去の経験からいろいろ面倒なことが起こってる。

 気がついたときにはその全てが片づいてて、忠言されるんだ。

 あの……あの世界一ウゼェ男に。


 「迷惑かけただろ?」

 「そっそうでもないよ」

 「暴れたりしなかったか?」

 「……」


 やったのか、俺は。

 ため息をついて部屋を見わたした、がスッキリと片づいてる。


 「片づけてくれたのか?」

 「一応……」

 「ありがとな」


 同情買うみたいで、美希の顔を見るのがイヤだった。


 「うん」

 「怪我とかしてねぇ?」


 飲んで相手ボコボコにしたり、されたりはよくあった。


 「大丈夫だよ」


 美希は嘘がうまいんだか下手なんだか分かんねぇな。
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