private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 ドキドキする。





 ―――――俗に言う、コンプレックス。





 乱杭歯(ラングイバ)に一重の目。

 視力も良くなくて唇は厚くて大きい。

 体型は努力すればカバーできるけど、顔は無理。

 コンタクトにしたって盛り上がってるみたいなあの目は、

 どうにかなるわけじゃない。




 目が一番のコンプレックスだったよ。



 幼稚園でも小学校でも目を見て話しなさいって先生は言ってたけど、


 相手の目を見ると 自分の目、見られてるのが分かる。

 相手の目が羨ましくて、ただそれだけで傷ついた。




 細くて小さくて重たくて……

 顔の中で一番大事なのって、目でしょ?




 目を見れば分かるっていう言葉があるくらいなんだから。

 いくら赤ちゃんみたいに透明感のある白目だったって、

 黒い部分が大きくたって、絶対


 “綺麗”


 とか


 “可愛い”


 とか、言われない。



 “気持ち悪い”


 って言われるに決まってるんだ。

 当時の私にとって、褒め文句なんか一生縁のない言葉だった。

 もし、誰かが言ってくれたとしても、荒廃した私の心は、

 それをお世辞とさえ思わずに、 嫌味と受け止める。

 そしてそれはきっと、あのときみたいな、トラウマにさえなるんだ―――――




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*乱杭歯:ラングイバ 歯並びが物凄く悪いこと。デコボコ。
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