private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
トントンッ
ビクッとして反射的に右肩を見たら、星哉が口端を引いて
微かに笑うと、軽くニ、三度うなづいた。
そして私と観客の前を通過して、袖に向かって歩いて行く。
いつの間にか懺悔の時間は終わったみたいで、
他の五人は私たちの後ろを歩いていた。
私も慌ててそれに倣ったけど………
星哉、見たよね私の顔。
あの、酷い顔。
自分が泣きそうなとき、どれだけ顔が歪むか知ってる。
ビックリしたとき、どれだけ醜い顔になるか、分かってる。
見られた……
一番見られたくなかったのに……
袖につく頃、私は口を押さえ、歯を食いしばっていた。
左手はポケットをまさぐってマスクを掴む。
隠れたい。
誰からも見えないところに行って、思いっきり泣きたい。
恥ずかしいよ。
惨めだよ。
こんなのイヤ。
星哉、何で私に微笑ったの?
同情?
やめて。
星哉にだけはそんなこと、されたくなかったよ。