private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 「俺の彼女になるんなら、それなりのことをして貰う」

 「アンタも私にそれなりのことをしてよね?」

 「人に下の名前で呼ばせといて、お前は代名詞遣うのか」

 「気ぃ利かないよね。私は許可下りるの待ってたんだけど」




 ウゼー。




 ああ言えばこう言いやがる。


 「失礼してよろしいですか?」


 ドライバーの方からコンタクトがあった。


 「どうぞ」


 と答えたのは俺じゃなくて岡崎美希。


 「ただいま交差点の信号です。東へ曲がったあとは、
 どちらに向かえばよろしいですか?」


 岡崎は俺の許可を求める仕草さえも見もせず、

 声に向かって流暢に道筋を案内し始める。

 だんだん奴の手口が分かってきた。




 俺を陥れる気だろう。

 せいぜい頑張れよ。






 いくら侮辱されたって、所詮お前のやってることは

 プランクトンが牙を剥くくらいのことだ。

 俺がハメてやる。







 車が静かに停車して、リムジンのドアが開く。

 岡崎は降りずに座ってる。


 「着いたみたいだけど?」

 「そうだね」

 「降りろよ」

 「セレブっていうからマナーは大丈夫かと思ったけど、全然ダメみたいだね」

 「どういう意味だよ?」

 「家のドアの前までエスコートするのが普通でしょ」
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