private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 「私お手洗い行きたくなっちゃったんだけど……」

 「どこにあるんだよ」

 「あそこ」


 スーパーの外に赤と黒でマークが書いてあった。



 ヤベェ吐きそう……



 岡崎は俺の手を引っ張って、ゆっくり歩く。

 マジで気ぃ遣ってくれてんだな。

 休戦中って思っていいのか?

 それともこれは作戦の一環?




 …………もうどっちでもいいか。




 今は気持ち悪くて、それどころじゃねぇ。

 トイレで嘔吐すると、スッキリして気分も良くなった。

 岡崎に借りつくっちまったよ。

 どうやって返すかな……

 しかもマジ格好悪いとこ見られたからなぁ。

 挽回しねぇと勝負に負ける。


 「大丈夫?」


 マジで心配そうな顔して岡崎は俺のことを待っていた。

 ちゃんと礼言わなきゃ、だよな。


 「ありがとな。気分良くなったよ」


 自然と微笑みがこぼれ出た。


 「うっうん……良かった……ね? うん、じゃあ学校行こうか?」


 あれ?

 どうした?

 目を逸らされた。

 嫌味の一つでも返ってくると思ったんだけど。


 「ここドコだか知ってる?」

 「うん」

 「良かった。学校行けないかと思ったわ……っていうか岡崎は二年間通ってんだもんなぁ」


 アホか俺は。


 「風邪引いてるの?」


 俺より背の低い岡崎は俺を見上げるようにして喋りかけてきた。


 「あ? あぁ……そうじゃない」


 気分悪くてフラフラしてたこと言ってんだよな?
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