ナイチンゲール誓詞
ピピッ ――― 夜の病棟に響かないくらいの小さなアラーム。


家族を思ってしんみりしている場合じゃない。
母からナースに武装して立ち上がる。

マグカップをシンクに置いて、変わりに点滴セットを手に取る。


点滴の交換、気切の吸引、今日オペした我慢強いあの患者さんはちゃんと寝ているか・・・。
気になることを頭の中で反芻しながら、煌々と明るいスタッフステーションから薄暗い病棟に出る。


シンと静まる夜の病棟。
静かなのは、患者さんたちが安静安楽にしているから。


寝顔を見ながら、ほっとする。
モニターに異常がないことを確かめて、一人頷く。


――― 我が任務を忠実に尽くさんことを。

清く過ごすのは無理だけど、コッチは守れそうだわ。


点滴を替えようと、病室のドアを開けると。

寝ていると思っていた患者さんが、ベッド上で起き上がっていた。
< 2 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop