Chorus to you

「次、体育だよ!いこっ!」

「あ、待ってー」

バタバタとクラスメイト達が教室を飛び出す。

私はポツンと電気の消えた教室に残された。

「…はぁ。」

ため息をひとつ吐くと、私は体操着を持って更衣室に向かった。

体育の授業は、私のクラスのD組と、隣のクラスのC組と合同でやる。C組には私の親友の塚本陸美がいるから少しだけ安心。

着替えて外に出ると曇り空の校庭の真ん中から声がした。

「ほなーっ!こっちこっち!」

「おはよう陸美!」

私は笑顔で陸美の元に駆け寄った。

陸美は黒髪のロングヘアがよく似合う、目がパッチリした美少女だ。外見とはうらはらに、サッパリした性格で私は好きだ。

「あ、綾乃ちゃんおはよう」

陸美がクラスで仲良くしているらしい、櫻井綾乃が隣にいた。綾乃ちゃんは小柄でショートヘアの、笑顔が可愛い子だ。

「おはよう穂菜実ちゃん」

挨拶を交わすと、ピピーッと笛が鳴って、先生が大きな声で指示を出した。

「はい、準備体操しましょう!」

体育係が前に出てきて、全体でラジオ体操をした。

背中を反らせて仰いだ空は灰色で、今にも雨が降り出しそうだった。

「先生、終わりましたぁー」

体育係のひとりが先生に言う。

「じゃあストレッチをするので2人1組を作ってくださーい!」

2人…1組…。私の嫌いな単語。

次々とペアが出来上がって行く中、私は立ち尽くしていた。

「できたー?…あれ、安藤は?」

先生に名前を呼ばれて、私は肩をビクッと持ち上げた。D組の人達は目を逸らす。

「奇数だから仕方ないか。誰か入れてやって〜!」

シーンとなる。こんなのいつも通りのハズなのに、なんだか虚しくなってきた。

「先生、他クラスでもいいなら!」

陸美が手を挙げてくれた。だが隣にはやはり綾乃ちゃんがいる。

「おお塚本、いつもありがとう。いれてもらいなさい、安藤」

背中をぽんと押されてフラフラとそこへ行った。

「まず1人が長座して……」

先生の声を遮って、私は陸美に耳打ちした。

「ありがとう、いつもごめんね」

「いーって!あんなの気にすんな!」

陸美はニカッと笑って見せた。陸美のこう言うところには本当に感謝してるし、何度も助けられてる。だけど。

「陸美ちゃん、押すよ!」

「あ、あやのんありがとう♪」

綾乃ちゃんが割り込んできて、長座した陸美の背中を押した。

2人で楽しそうにストレッチしてる姿を呆然と眺める。

考えすぎかもしれないけど…綾乃ちゃんが私と陸美の間に入って、引き離そうとしてる様にみえるんだよね。

「じゃ、次はほな!」

「え、穂菜実ちゃんいたの?」

綾乃ちゃんは陸美の声で初めて気づいたかの様な反応をする。

居たんだっけって…情けないけど毎回ここにいれてもらってんだから忘れるなんてあるわけないでしょ…。わざとらしい。でも口には出せない。

1回陸美にこの事言ったけど「あやのん、ほなの事心配してたんだよ?そんな訳ないじゃん!」って分かってくれないし。

…って、私が考え事してるうちにまた綾乃ちゃん陸美連れてあんなとこ行ってるし!

「また1人になってるー、毎回あの2人の所行ってるよね?なのに置いてかれてるとか完全に嫌がられてんじゃん、ウケるー」

「しょうがないよ、友達いないんだから」

あははは、と声を揃えて笑うクラスメイトの声が何故か真っ直ぐ耳に入ってくる。

「…本当最悪」

誰にも聞こえない様な小さな声で呟くと、校庭の端にいる2人をおいかけた。パラパラと雨が降り出していた。

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