アフターレイン
「…だって、直己は抱きつくと怒るし」

「当たり前だろ」

「うぅ、久志ぃー」

「俺も怒るけどな」



直己ほど鬼じゃないけど。



「…息子たちがいじめる…」



そう言って、親父はさめざめと泣く〝演技〟をした。

手の平を顔で覆いながらも、時々ちらちらと俺と直己の様子をうかがってくるのがまたうざい。



ああもう、勝手にやってろ。



「こんなのもう放っといてさ、アニキも早くこっち来て手伝ってよ」

「手伝う? 何を?」



すすり泣く真似事をする親父相手に見事なスルースキルを発揮した直己が、素早く家の中に戻っていく。

俺も直己同様に親父を完全無視し、その背中を追ってリビングへと向かった。
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