アフターレイン
「……」



パタン、とリビングの扉を閉めると、あまりにも精度の低い嘘泣きの声が完全に止んだ。



どういう行動に出るか少し気になったので、ドアの上部にあるのぞき窓から親父の姿を文字通り覗き見る俺。

直己は全く興味が沸かないらしく、さっさとキッチンに足を向けていた。



「……、……」



何やらぼそぼそと呟いているようだが、なんせドア越しなものでちっとも聞こえない。



大体予想はつくけど。

『酷いよ息子たち』とか『パパは寂しいよ』とか、そんなとこだろ。

いつも同じことばっか言ってっし。



そのまま観察を続けていると、親父はすっくと立ち上がり、顔を俯けて無言のまま、扉を開け中に入ってきた。



「…酷い。酷いよ、久志、直己…」



呟く台詞も、予想していたまんま。



思ったよりつまらなかったので、俺も直己に倣ってすぐキッチンに向かった。
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