アフターレイン
「じゃあ、そっちの金髪がひーくん?」



唐突に皐月の視線がこっちに向けられた。



ひーくん、とかいう恥ずかしいあだ名、ずいぶん長い間呼ばれてないぞ。

恐らく幼稚園の時以来だ。



この展開にどこかついて行けてない俺がたじろいでいると、皐月はまたもにっこりと笑う。



「ひーくん、久し振り」

「え、ああ……、おう」

「あははっ、焦ってる。いきなりあたしが来てびっくりした?」



いや、普通驚くだろ。

十年以上まったく音沙汰なかった奴がいきなり家に来た、なんて、びっくりするなと言う方が無理がある。



「仁(ジン)さんは?」



仁、とはあの子煩悩親父のことだ。



「奥でいじけてるよ」



俺の言葉に首を傾げながら、直己に招かれて皐月がリビングの扉をくぐる。

すると突然、





「グッドイブニィィング皐月ちゃん! 覚えてる? 覚えてる!? 僕だよ! 仁だよ!!」



嫌に陽気なおっさんが目の前にたちはだかり、ぎゅーっと熱烈に皐月に抱きついた。
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