アフターレイン

我が父ながら驚くべき立ち直りの早さだ。

皐月がぎょっと目を見開いて、自分に抱き付く中年男を凝視している。無理もない。



「やめなよ父さん。それセクハラだから」



さらっと心に突き刺さる台詞を吐く直己に、親父は暴走をぴたりと止めて自ら皐月から離れた。

なんかもう、直己がサルの調教師みたいになっている。



皐月はほっと安堵の溜め息を洩らし、明らかな苦笑いを浮かべながら「あ、はは……。仁さんは相変わらずで」と言った。

そして、背後に立つ俺に向き直ると。



「……いじけてないじゃん？」



少し唇を尖らして、親父や直己に聞こえないくらいの小声で囁く。



いーや、さっきまでは確かにいじけてたんだ。

さっきまではな。