アフターレイン
「パパも食べるー」



言いながらどっかりと腰を下ろす親父。

その隣に座る直己がそっと自分の椅子ごと遠ざかったのを、俺は見逃さなかった。



反抗期かよお前。

あれ? 間違えた、思春期か。



どうやら皐月もその瞬間を目撃したようで、恐らく吹き出しそうになったのを慌てて飲み込んだんだろう。

盛大に咳き込んでいた。



「大丈夫? さっちゃん。風邪?」

「……や、違う。ちょっと咽せただけ。ありがとう」



なぜそう思えたのか知らないが、直己は皐月の体調を心配している。

たぶん原因お前だと思うよ。



しかしあれだな、お前のその態度、親父に接する時と百八十度違うよな。

相手によって使い分けるどころの話じゃなく、ここまでくると最早別人レベル。



勘弁してくれよ。



どうせ後で『直己がパパにだけ優しくない』とかいう泣き言を親父から延々聞かされるのは俺なんだぞ?

まあ八割方聞き流すけどな。
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