アフターレイン
「……」

「……」



直己と皐月も言葉を無くした。



カチャーン、と皐月がスプーンを落とす。

途端に食卓の場がしんと静まり返り、部屋の隅にある金魚の水槽から立つ僅かな水の音がやけに耳についた。



親父までもが沈黙を守ったきりだ。

しかしその目は明らかに何かを期待しているような輝きを放っている。





親父は鼻に半分に折った割り箸を突っ込み、顎(アゴ)を突き出して、いわゆるドジョウすくいのおっさんのような格好を決めていた。





──いつの間に?

いや、そんなことよりもさ。



「……ないわぁ」



ぼそり、と直己が呟く。

俺もそれに激しく同意だ。
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