アフターレイン
ああくそ、わかんねぇよ。

お前、何で泣いてんだ。





「……あたし、戻りたい」





何も言えない。

途切れ途切れに紡がれる皐月の言葉に耳を傾けるだけで精一杯だ。





「またこの家に、戻りたい」





何かあったんだろうか。

何か辛いことがあったんだろうか。

しかし誰もそれを訊くまでの勇気は持ち合わせておらず。



「……皐月、」



なだめるように名前を呼ぶだけ。

終始、良い台詞はひとつも出てきやしなかった。
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