アフターレイン
「……タマ、遅い」

「お前が早いだけだし」



いや、お前がワンテンポ遅れてるだけだ。



タマこと児玉樹(コダマ・イツキ)は、お赤飯炊いてあげたいくらいのおめでたい頭をしてる。まあ、一応俺の友人だ。

おめでたい頭、というのが、もちろん中身的にもクルクルパーなのは否めないのだが、見た目からしてもおめでたい。



真っ赤、なんだ。

それはもう鮮やかな、赤。



「……」

「……何でこっち見てんの」

「や、別に」



赤髪とか。

どこぞの漫画に影響されたとしか思えないんだけど。



幸いなことにタマも顔だけはいいから、最も残念で恐ろしい事態は免れているが。

お前それはちょっとアレだぞ、とちょっとばかしオブラートに包んで指摘したこともあるが、ちっとも改めようとしない。



これはもうどうにもならないので、こいつにはこいつなりの美意識があるんだろう、と考えることにした。



将来的には黒歴史にしかならないだろうけど。

同窓会とかで再会した時、古傷えぐってあげたら面白そうだから今は黙っとく。



「……何、その黒い笑み」



無意識に顔に出てしまっていたらしい。



俺は「別に」と適当に言葉を濁して、視線をぷいっと逸らした。

見るに耐えない。



タマの〝黒歴史ほじくり返されて恥ずかしさに悶える姿〟を想像すると、それだけで吹き出してしまいそうだった。
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