アフターレイン
「……あのさ」

「何?」



声を掛けると皐月は俺の顔を見て首を傾げた。



「……」



駄目だ。

やっぱ、訊けねぇ。

突っ込んじゃいけねぇ気がするんだ。何となくだけど。

さんざん心中で悩んだ挙げ句、当たり障りのない無難な質問をすることにした。



「昨日、いきなり家に来たのは何で?」



これなら別に問題ないだろ。

皐月は「そういえば言ってなかったかもね」といたずらっ子のように無邪気に笑ってから、口を開く。



「この前、スーパーで偶然直くんに会ったの。全然変わってなかったからお互いすぐ気付いたよ」

「へー」



初耳だよ。

直己はそんなこと一言も言ってなかったぞ。あの腹黒め。
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