アフターレイン
頭は良くも悪くもない。

至ってスタンダードな、どこにでもある高校だ。

特別な学科があるって訳でもないし、特別何かの活動に力を入れている訳でもない。



〝平凡〟を具現化したような学校だ。



こんなレベルの高校なら北海道にもあるんじゃねぇかな。

ここでしか叶えられない夢なんかなさそうなもんだが……。



「なんてね。それは嘘」



あ、そう。

あっさりとバラされた皐月の小さな冗談に返す言葉もない。



「じゃあ、何で?」

「久志と直くん、それから仁さんにもう一回会いたかっただけ」

「……それだけ?」

「え?」

「あ、いや、何でもない」





──いろいろ引っかかるところもあるが、今はそれでいいや。

もうすぐチャイムが鳴る。



俺は皐月に手を振り、だるい足を動かして教室へと向かった。
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