アフターレイン
鞄の中からタオルを取り出して、抱き上げた猫をそれにくるんだ。

雨がよく降る季節だから、タオルはいつも常備している。

思わぬところで役に立ったな。



「マール」

「は?」

「名前。目がまん丸だから」



タマがそう言うと、まるで返事をするみたいに俺の腕の中の猫が声を上げる。



「気に入ったってさ」



別にそういう意味の鳴き声じゃないと思うけどな。

名前を呼ばれて応えたんじゃなくて、ただ単に鳴き声で母猫を探そうとしてるとか、そんなんじゃね?



でも、まあ……いっか。

俺名前考えるの苦手だし。



「マール、か」



確認するみたいに呟くと、猫は俺の顔を見上げて短く鳴いた。
< 44 / 108 >

この作品をシェア

pagetop