アフターレイン







「こいつめっちゃ細いね。ちっちゃいし、ひねったら折れそう」

「ひねんなよ」

「んなことする訳ないじゃん」



 直己はリビングの床にひっくり返ったマールのお腹をいじくり回しながら「なー」と喋るはずのない猫に同意を求めた。



 最初こそ、マールを育てることに難色を示していた直己だが、実際に一番可愛がっているのはこいつ。

 だけどマールは誰に懐くとかなくて、家族全員を同じくらいに好いてる感じ。



 まだ小さいからな。

 好きとか嫌いとかの区別がなく、とにかく「みんなが大好き」なんだろう。

 人間で言ったら、まだ幼すぎて善悪もわからない子供みたいな。



 元気だし、よく悪戯もする。



 さっきは俺の漫画をびりびりに破られたし、直己と親父も既に何らかの被害に遭っているようだ。
< 49 / 108 >

この作品をシェア

pagetop