アフターレイン
「こいつめっちゃ細いね。ちっちゃいし、ひねったら折れそう」
「ひねんなよ」
「んなことする訳ないじゃん」
直己はリビングの床にひっくり返ったマールのお腹をいじくり回しながら「なー」と喋るはずのない猫に同意を求めた。
最初こそ、マールを育てることに難色を示していた直己だが、実際に一番可愛がっているのはこいつ。
だけどマールは誰に懐くとかなくて、家族全員を同じくらいに好いてる感じ。
まだ小さいからな。
好きとか嫌いとかの区別がなく、とにかく「みんなが大好き」なんだろう。
人間で言ったら、まだ幼すぎて善悪もわからない子供みたいな。
元気だし、よく悪戯もする。
さっきは俺の漫画をびりびりに破られたし、直己と親父も既に何らかの被害に遭っているようだ。