アフターレイン
「皐月」

「あ、久志だ。おじゃましてるよ」

「何しに来たんだ?」

「酷いなぁ、用がなかったら来ちゃ駄目なの? 今日土曜日だし、暇だったから遊びに来ただけなんだけど」



 俺の言葉に笑いながら悪戯っぽく言う。

 皐月はリビングをきょろきょろ見回して、不思議そうに眉をしかめた。



「それよりどうしたの? この部屋……」

「張本人がそこにいるよ」

「へ?」



 俺が指差したのは、背の低い本棚の横。

 初めて見る人物のことを図りかねているらしいマールが、身を縮めて隠れていた。



 皐月が背を屈めてそこを覗き込むと、いささか不安そうに耳を後ろに倒すマール。

 ありゃ皐月にビビってんな。


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