アフターレイン
 大丈夫、まだ間に合う。



「行こう」



 そうと決めれば行動は早かった。



 俺は脱衣場からタオルを持ってきて、さっきよりは少しだけ落ち着いた様子のマールを包み込み、キャリーケースの用意をする。

 その間に直己は汚れたフローリングの掃除をしていて、親父は車を出す為に一足早く家を出ていた。



 抱き上げたマールはゼエゼエと息を荒くしている。



 ──こんなこと、初めて。

 今までも生き物を飼ったことはあったが、みんな大した病気も怪我もなく天寿を全うしてる。

 だから俺はこんな状態のマールを前に、かつてない困惑を感じていた。



 治らない病気だったらどうしよう。

 ドラマや小説なんかでよくある、不治の難病とかだったらどうしよう。



 そんなことばかり考えてしまう。
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