アフターレイン
 受付を済ませ、しばし待合室で名前が呼ばれるのを待つ。



 落ち着かなくて周囲をきょろきょろと見回していると、病院の一角に小さな全面ガラス張りの部屋があることに気付いた。

 こちらから中が丸見えの部屋。

 そこには同じような柄の二匹の子猫がいて、ガラスには〝里親募集中〟との文字があった。



 この病院の先生は、見付けた捨て猫や捨て犬なんかを全て保護して、健康な状態になるまでしっかり治療をし、それから里親を探すという活動をしている。

 ここら辺りの近所の人も、捨て犬猫を見付けると保健所ではなくこの病院に連れてくるらしい。



 この前、翼に怪我をしたカラスを保護していたのには流石にびっくりしたなあ。

 まあ、そんな人だから周囲からの信頼も厚いんだろうけど。



 とか何とかあまり意味のないことを考えていると「影山さん」と名前が呼ばれた。



「俺と父さん、ここで待ってるから。アニキだけ行ってきて」

「ん、わかった」



 年配の看護士さんに誘導され、俺は診察室に足を踏み入れた。
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